2012年7月8日

終戦の詔勅(玉音放送)の内容が難しすぎる件

東亜戦争終結ノ詔書、戦争終結ニ関スル詔書


朕深ク世界ノ大勢ト帝國ノ現状トニ鑑ミ非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ收拾セムト欲シ茲ニ忠良ナル爾臣民ニ告ク
朕ハ帝國政府ヲシテ米英支蘇四國ニ對シ其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨通告セシメタリ
抑ゝ帝國臣民ノ康寧ヲ圖リ萬邦共榮ノ樂ヲ偕ニスルハ皇祖皇宗ノ遺範ニシテ朕ノ拳々措カサル所曩ニ米英二國ニ宣戰セル所以モ亦實ニ帝國ノ自存ト東亞ノ安定トヲ庶幾スルニ出テ他國ノ主權ヲ排シ領土ヲ侵スカ如キハ固ヨリ朕カ志ニアラス然ルニ交戰已ニ四歳ヲ閲シ朕カ陸海將兵ノ勇戰朕カ百僚有司ノ勵精朕カ一億衆庶ノ奉公各ゝ最善ヲ盡セルニ拘ラス戰局必スシモ好轉セス世界ノ大勢亦我ニ利アラス加之敵ハ新ニ殘虐ナル爆彈ヲ使用シテ頻ニ無辜ヲ殺傷シ慘害ノ及フ所眞ニ測ルヘカラサルニ至ル而モ尚交戰ヲ繼續セムカ終ニ我カ民族ノ滅亡ヲ招來スルノミナラス延テ人類ノ文明ヲモ破却スヘシ斯ノ如クムハ朕何ヲ以テカ億兆ノ赤子ヲ保シ皇祖皇宗ノ神靈ニ謝セムヤ是レ朕カ帝國政府ヲシテ共同宣言ニ應セシムルニ至レル所以ナリ
朕ハ帝國ト共ニ終始東亞ノ解放ニ協力セル諸盟邦ニ對シ遺憾ノ意ヲ表セサルヲ得ス帝國臣民ニシテ戰陣ニ死シ職域ニ殉シ非命ニ斃レタル者及其ノ遺族ニ想ヲ致セハ五内爲ニ裂ク且戰傷ヲ負ヒ災禍ヲ蒙リ家業ヲ失ヒタル者ノ厚生ニ至リテハ朕ノ深ク軫念スル所ナリ惟フニ今後帝國ノ受クヘキ苦難ハ固ヨリ尋常ニアラス爾臣民ノ衷情モ朕善ク之ヲ知ル然レトモ朕ハ時運ノ趨ク所堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ以テ萬世ノ爲ニ太平ヲ開カムト欲ス
朕ハ茲ニ國體ヲ護持シ得テ忠良ナル爾臣民ノ赤誠ニ信倚シ常ニ爾臣民ト共ニ在リ若シ夫レ情ノ激スル所濫ニ事端ヲ滋クシ或ハ同胞排擠互ニ時局ヲ亂リ爲ニ大道ヲ誤リ信義ヲ世界ニ失フカ如キハ朕最モ之ヲ戒ム宜シク擧國一家子孫相傳ヘ確ク神州ノ不滅ヲ信シ任重クシテ道遠キヲ念ヒ總力ヲ將來ノ建設ニ傾ケ道義ヲ篤クシ志操ヲ鞏クシ誓テ國體ノ精華ヲ發揚シ世界ノ進運ニ後レサラムコトヲ期スヘシ爾臣民其レ克ク朕カ意ヲ體セヨ







この原文を現代表記に直してみる。


朕(ちん)深く世界の大勢(たいせい)と帝国の現状とに鑑(かんが)み、
非常の措置を以(もっ)て時局(じきょく)を収拾せんと欲(ほっ)し、
茲(ここ)に忠良(ちゅうりょう)なる爾(なんじ)臣民(しんみん)に告ぐ。


朕(ちん)は帝国政府をして米英支蘇(べいえいしそ)四国(しこく)に対し、
其(そ)の共同宣言を受諾(じゅだく)する旨(むね)、通告せしめたり。


抑々(そもそも)、帝国臣民(しんみん)の康寧(こうねい)を図り
万邦共栄(ばんぽうきょうえい)の楽(たのしみ)を偕(とも)にするは、
皇祖皇宗(こうそこうそう)の遺範(いはん)にして
朕(ちん)の拳々(けんけん)措(お)かざる所、
曩(さき)に米英二国に宣戦せる所以(ゆえん)も、
亦(また)実に帝国の自存(じそん)と東亜の安定とを庶幾(しょき)するに出(いで)て
他国の主権を排し、領土を侵すが如(ごと)きは
固(もと)より朕(ちん)が志(こころざし)にあらず。


然(しか)るに交戦已(すで)に四歳(しさい)を閲(けみ)し
朕(ちん)が陸海将兵の勇戦(ゆうせん)、
朕(ちん)が百僚有司(ひょくりょうゆうし)の励精(れいせい)、
朕(ちん)が一億衆庶(いちおくしゅうしょ)の奉公(ほうこう)
各々(おのおの)最善を尽(つ)くせるに拘(かかわ)らず、
戦局必ずしも好転せず。


世界の大勢、亦(また)我に利(り)あらず、
加之(しかのみならず)敵は新に残虐なる爆弾を使用して
頻(しき)りに無辜(むこ)を殺傷し惨害(さんがい)の及ぶ所、
真(しん)に測(はか)るべからざるに至(いた)る。


而(しかも)も尚(なお)、交戦を継続せんか、
終(つい)に我が民族の滅亡を招来(しょうらい)するのみならず、
延(ひい)て人類の文明をも破却(はきゃく)すべし。


斯(かく)の如(ごと)くは、
朕(ちん)何を以(もっ)てか億兆(おくちょう)の赤子(せきし)を保(ほ)し
皇祖皇宗(こうそこうそう)の神霊(しんれい)に謝(しょ)せむや。


是(こ)れ、朕(ちん)が帝国政府をして
共同宣言に応(おう)せしむるに至(いた)れる所以(ゆえん)なり。


朕(ちん)は帝国と共に終始東亜の解放に協力せる諸盟邦(しょめいほう)に対し、
遺憾の意を表(ひょう)せざるを得(え)ず。


帝国臣民(しんみん)にして戦陣(せんじん)に死し、
職域(しょくいき)に殉(じゅん)じ、
非命(ひめい)に斃(たお)れたる者、
及び其(そ)の遺族に想(おもい)を致(いた)せば
五内(ごだい)為(ため)に裂(さ)く。


且(かつ)、戦傷(せんしょう)を負い、
災禍(さいか)を蒙(こうむ)り
家業を失ひたる者の厚生に至りては、
(ちん)の深く軫念(しんねん)する所なり。


惟(おも)うに今後、帝国の受(う)くべき苦難は固(もと)より尋常にあらず。
爾(なんじ)臣民(しんみん)の衷情(ちゅうじょう)も、朕(ちん)善(よ)く之(これ)を知る。


然(しか)れども、朕(ちん)は時運(じうん)の趨(おもむ)く所、
堪(た)え難きを堪(た)え、忍び難きを忍び、
以(もっ)て万世(ばんせい)の為に太平(たいへい)を開かんと欲(ほっ)す。


朕(ちん)は茲(ここ)に国体を護持(ごじ)し得(え)て、
忠良(ちゅうりょう)なる爾(なんじ)臣民(しんみん)の赤誠(せきせい)に信倚(しんい)し、
常に爾(なんじ)臣民(しんみん)と共に在り。


若(も)し夫(そ)れ、情(じょう)の激(げき)する所、
濫(みだり)に事端(じたん)を滋(しげ)くし、
或(あるい)は同胞(どうほう)排擠(はいせい)
互(たがい)に時局を乱(みだ)り為に大道(だいどう)を誤り、
信義を世界に失(うしな)うが如(ごと)きは、
朕(ちん)最も之(これ)を戒(いまし)む。


宜しく挙国(きょこく)一家子孫相(あい)伝(つた)へ、
確(かた)く神州(しんしゅう)の不滅を信じ、
任(にん)重くして道(みち)遠きを念(おも)い、
総力を将来の建設に傾け、
道義を篤(あつ)くし志操(しそう)を鞏(かた)くし誓って
国体の精華(せいか)を発揚(はつよう)し、
世界の進運(しんうん)に後(おく)れざらんことを期(き)すべし。


爾(なんじ)臣民(しんみん)其(そ)れ克(よ)く朕が意(い)を体(たい)せよ。


排擠(はいせい)は「はいさい」と発音されているように聞こえる。


現代口語訳についてはYouTubeにあるから省略するとして、この「終戦の詔勅」が読まれたのは昭和20年8月のこと。
つまり西暦1945年で今から約68年前のことになるんやけど、一番上の原文をそのまま読める日本人はどんくらいいるんやろか?
まぁ現代の官報だって難しい単語はあるやろうけど、それにしてもわずか70年弱で日本語がここまで変わること驚くよね。

そしてもう一つ。
現代口語訳にするとどうしても一言では訳せない単語が多いことに気が付くんや。
辞書を引けば載っているかもしれんけど、普段使わない、つまり死んだ言葉やねん。
どうやら現代人は難しい言葉を簡単にしようとし過ぎて、多くの言葉を殺してしまったんやなぁ。

高い文化水準と、国民思想を維持するには、やっぱり勉強するしかないのね~


ちなみに、よく大河ドラマとかで「時代考証が~」とか「言葉遣いが~」とか言ってる人がおるけど、そんなの本気でやられたら字幕がなくちゃ分からんってば。
けど仲間由紀恵のテンペスト(NHK BS時代劇)は確かに違和感あったなぁ。
やっぱり時代劇は“それ”っぽくなくちゃね。

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